大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)1280号 判決

被告人 朴鶴万 外一名

〔抄 録〕

被告人両名は他人を脅迫して金員を喝取しようと企て共謀の上、原判示日時頃国鉄船橋駅ホームから東武鉄道ホームに架設された陸橋の東武鉄道側階段においてたまたま同所を通りかかつた松原宗明に対し、被告人高橋吉夫が突然背後から右手で背中を突き、被告人朴鶴万は同人の面前に立ち塞り、前後から同人を挾み、「お前は何処だ」「腹がすいたから金を貸せ」「少し面倒をみてくれ」「金がないというが、もしあればどうするんだ」などとこもごも申し向けて、被告人高橋吉夫は右手挙で同人の左頬を一回殴打し、金員を要求したが、同人がこれに応ぜず、隙をみて折柄ホームに進入停車した東武電車に駈け込んだところ、被告人らは同人を追跡して同電車に乗車し、被告人朴鶴万は松崎宗明の腰かけている座席の右脇に腰かけ、被告人高橋吉夫はその面前に立ち塞つて取り囲み、同日午後六時六分頃同電車が発車すると、進行中の車内で同人に住所や勤務先等をたずねたり、乗車券を呈示させたりした上、被告人朴鶴万は「生意気な顔をしていやがる、余りでかい顔をするな、六実に着いたらお前の顔を見られないようにしてやる」と申し向け、同人が救いを求めるため車掌室内に駈け込むと、そのあとを追いかけて行き、「こんなところへなぜ這入るのか、早く出ろ」と申し向けて車掌室から同人を連れ出してつきまとい、同日午後六時二十五分頃電車が六実駅に到着するや、被告人らは同人の両腕を両脇から抱え込んで下車させ、同人がこれを振り払つて逃げ出したところ、そのあとを追いかけ、同駅ホームにおいて被告人朴鶴万は足払いをかけ、よろめく同人の前面から両手でその両肩を掴んで押しつけ、膝部で同人の顔面を二、三回蹴り上げ、同人がその場に仰向けに転倒したところ、靴履の足でその顔面を数回蹴り、同人がよろめきながら立ち上ろうとするや、同人の頭髮を片手に掴み、片手で顔面を殴打し、たまりかねて同人が居合せた駅長に救いを求めると、被告人高橋は「この野郎、生意気だ」とどなり、被告人朴鶴万と共に同人の顔面を数回殴打して同人をして全治約五日間を要する顔面打撲傷及び擦過傷を負わせた上、被告人らは更に右松崎宗明の両脇から両腕を掴んで同所から駅前通りの渋谷魚店脇の暗闇の路地に連れ込み、道路端のトタン塀に同人を押しつけながら、被告人朴鶴万において「お前の家は何処だ、お前の家へ行つて母親と掛け合つてやる」「こんなにズボンを汚してしまい、どうしてくれるんだ」と申し向け、暗に金員の提供方を要求し、かつ、一回同人の顔面を殴打して、その要求に応じなければ更に危害を加うべき気勢を示して脅迫し、よつて同人をして即時同所において金六百円を交付せしめてこれを喝取した事実を認めるに十分であるが、いまだ被告人らが右松崎宗明に対し暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧して金員を強取したものとは認め難いところであるから、原判決が被告人の所為を傷害及び恐喝の罪と認めず、強盗傷人の罪と認定処断したのは、すなわち、事実を誤認したものといわなければならない。しこうして、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかなところであるから、原判決は各弁護人の爾余の論旨につき判断をなすまでもなく、すでにこの点において失当として破棄を免れない。

(坂井 山本長 荒川)

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